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契約の基本

個人事業主と一人会社で、契約書は何年しまっておくのか

2026年10月26日·約9分·株式会社ケアン

一人で仕事をしていると、契約書をしまう場所を決めるのは自分だけです。 総務部も、ファイリングの決まりもありません。机の引き出しか、パソコンのフォルダか、 メールの中にそのまま。それで何年か回ってしまいます。

そこで出てくるのが、「この契約書、いつまで取っておけばいいのか」という 疑問です。これは気分で決める話ではなく、省令に年数で書いてあります。 しかも個人事業主と法人で、年数も、数え始めの日も、置く場所も違います。条文をたどってみます。

契約書は、条文に名前で挙がっている書類です

まず、契約書が保存の対象になるのかどうか。個人事業主のうち青色申告をしている方について、 所得税法施行規則の第63条第1項は、保存するものを3つの号に分けて並べています。 その第3号がこれです。

取引に関して相手方から受け取つた注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類及び自己の作成したこれらの書類でその写しのあるものはその写し

— 所得税法施行規則 第63条第1項第3号。出典: e-Gov 法令検索の 法令データ(読む用の 条文ページ)

法人のほうは、法人税法施行規則の第59条第1項第3号に、ほとんど同じ文が置かれています。

取引に関して、相手方から受け取つた注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類及び自己の作成したこれらの書類でその写しのあるものはその写し

— 法人税法施行規則 第59条第1項第3号。出典: e-Gov 法令検索の 法令データ(読む用の 条文ページ)

違うのは「取引に関して」のあとに読点が入るかどうかだけで、挙がっている書類の名前は同じです。注文書、契約書、送り状、領収書、見積書。契約書は、どちらにも名前で書かれています。

もうひとつ見落としやすいのが、文の後半です。「自己の作成したこれらの書類でその写しのあるものはその写し」。相手から受け取ったものだけでなく、自分が作って相手に渡した契約書の控えも、 控えがあるならそれを保存する、という書き方になっています。 2通作って1通ずつ持ち合う契約書なら、自分の手元に残る1通がこれに当たると読めます。

個人事業主は、七年と五年に分かれます

では、何年しまっておくのか。第63条第1項の柱書きを、そのまま引きます。

次に掲げる帳簿及び書類を整理し、起算日から七年間(第三号に掲げる書類のうち、現金預金取引等関係書類に該当する書類以外のものにあつては、五年間)、これをその者の住所地若しくは居所地又はその営む事業に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地に保存しなければならない。

— 所得税法施行規則 第63条第1項。出典: e-Gov 法令検索の 法令データ

原則は七年間。そのうえで括弧の中に、第3号の書類 (さきほどの、契約書が名前で挙がっている号です)のうち「現金預金取引等関係書類に該当する書類以外のもの」は五年間、と書かれています。

では「現金預金取引等関係書類」とは何か。これも同じ条の第3項に定義があります。

同項第三号に掲げる書類のうち、現金の収受若しくは払出し又は預貯金の預入若しくは引出しに際して作成されたもの

— 所得税法施行規則 第63条第3項。出典: e-Gov 法令検索の 法令データ

現金やお金の出し入れに際して作られたものかどうか。それが線引きです。 条文が書いているのは、ここまでです。

手元の契約書がどちらに当たるのかは、その契約書がどういう場面で作られたものかによります。 条文は「契約書は五年」とも「契約書は七年」とも書いていません。当てはめは、所轄の税務署か税理士にご確認ください。迷うくらいなら長いほうに揃えて置いておく、という整理の仕方もあります (七年置いてあれば、五年の書類も当然その中に入っています)。

法人のほうは、この括弧書きがありません。第59条第1項の柱書きはこうです。

青色申告法人は、次に掲げる帳簿書類を整理し、起算日から七年間、これを納税地(第三号に掲げる書類にあつては、当該納税地又は同号の取引に係る国内の事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地)に保存しなければならない。

— 法人税法施行規則 第59条第1項。出典: e-Gov 法令検索の 法令データ

七年間だけで、短くなる場合は書かれていません。 一人会社でも、法人である以上はこちらの条文を見ることになります。

数え始めは、受け取った日ではありません

どちらの条文も「起算日から」と書いています。この起算日が、受け取った日ではないところが つまずきやすい点です。個人事業主の場合、第63条第4項にこうあります。

書類についてはその作成又は受領の日の属する年の翌年三月十五日の翌日をいう

— 所得税法施行規則 第63条第4項。出典: e-Gov 法令検索の 法令データ

「その年の翌年三月十五日の翌日」。確定申告の期限の翌日から数え始める、 という作りです。たとえば2026年6月に受け取った契約書なら、数え始めは2027年3月16日。 受け取った日から数えるより、その分だけ後ろにずれます。

法人は、決算のタイミングで決まります。

書類についてはその作成又は受領の日の属する事業年度終了の日の翌日から二月を経過した日をいう

— 法人税法施行規則 第59条第2項。出典: e-Gov 法令検索の 法令データ

事業年度が終わって二月を経過した日、つまり申告期限のあたりが数え始めになります (同じ第2項には、申告期限を延長している事業年度などについての定めも続いています)。

個人事業主(青色申告者)

所得税法施行規則 第63条

  • 原則は七年間。第3号の書類のうち現金預金取引等関係書類に該当しないものは五年間
  • 数え始めは、作成または受領の日の属する年の翌年3月15日の翌日
  • 置く場所は、住所地もしくは居所地、または事業に係る事務所・事業所など

法人(青色申告法人)

法人税法施行規則 第59条

  • 七年間。短くなる場合は条文に書かれていない
  • 数え始めは、事業年度終了の日の翌日から二月を経過した日
  • 置く場所は納税地。第3号の書類は、取引に係る国内の事務所などでもよい
同じ契約書でも、個人事業主と法人で、年数・数え始め・置く場所の書き方が違う(条文の文言から)

置く場所も、条文に書いてあります

さきほど引いた第63条第1項の柱書きに、もう一度目を戻してみます。「その者の住所地若しくは居所地又はその営む事業に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地」。住所地が先に来ています。事務所を借りていない個人事業主にとっては、 自宅に置いておくことがそのまま条文の書き方に沿う、ということになります。

法人は「納税地」が先で、第3号の書類 (契約書が挙がっている号)については「当該納税地又は同号の取引に係る国内の事務所、 事業所その他これらに準ずるものの所在地」と幅が付いています。 一人会社で自宅を本店にしているなら、結果として個人事業主のときと同じ場所になりますが、 条文の言葉としては別のことを書いています。

赤字を繰り越すなら、法人は十年です

一人会社で起きやすいのが、始めた年に赤字が出て、それを翌年以降の黒字と相殺する (欠損金の繰越し)という場面です。この適用を受けようとする場合について、 法人税法施行規則の第26条の3第1項が、別の年数を定めています。

当該内国法人は、同項の欠損金額が生じた事業年度の第五十九条第一項各号(帳簿書類の整理保存)に掲げる帳簿書類(法第五十七条第二項の規定により当該内国法人の各事業年度において生じた欠損金額とみなされたものにあつては、当該帳簿書類又はその写し)を整理し、第五十九条第二項に規定する起算日から十年間

— 法人税法施行規則 第26条の3第1項。出典: e-Gov 法令検索の 法令データ

十年間。しかも対象は「第五十九条第一項各号に掲げる帳簿書類」なので、 契約書が挙がっている第3号もそのまま入ります。 赤字の出た事業年度の分だけ、七年ではなく十年になる、という読み方です。 個人事業主の側の施行規則には、この十年の定めは見当たりませんでした。

青色申告ではないときは、別の条文を見ることになります

ここまでは「青色申告者」「青色申告法人」についての条文でした。 そうでない場合、個人事業主については、所得税法第232条第1項を受けた 所得税法施行規則の第102条に決まりが置かれています。 その第3項が、保存する書類を並べている箇所です。

その年において法第二百三十二条第一項に規定する業務に関して作成し、又は受領した請求書、納品書、送り状、領収書その他これらに類する書類(自己の作成したこれらの書類でその写しのあるものは、当該写しを含む。)

— 所得税法施行規則 第102条第3項第2号。出典: e-Gov 法令検索の 法令データ

並んでいるのは請求書、納品書、送り状、領収書。 第63条第1項第3号とは、挙がっている書類の名前が違います。この号に「契約書」という言葉は出てきません。ただ、末尾が「その他これらに類する書類」で結ばれているので、名前が無いことをもって「保存しなくてよい」と読むのは早いと思います。ここは条文の文言だけでは決まらないところなので、税理士か所轄の税務署にご確認ください。

年数は、同じ条の第4項に書かれています。

第六十三条第四項(青色申告者の帳簿書類の整理保存)に規定する起算日から七年間(その他の帳簿及び前項各号に掲げる書類にあつては、五年間)、その者の住所地若しくは居所地又はその営む事業に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地に保存しなければならない。

— 所得税法施行規則 第102条第4項。出典: e-Gov 法令検索の 法令データ

数え始めは第63条第4項と同じ(翌年3月15日の翌日)で、 第3項に並んだ書類は五年間と書かれています。 置く場所の書き方も、第63条第1項と同じです。

電子でやりとりした契約書は、また別の決まりです

ここまでに引いた条文が答えていたのは、何年しまっておくのか・どこに置くのかの2つです。ここまでの話は、紙で受け取った契約書・紙で作った契約書を、 そのまま紙で残す場合にそのまま当てはまります。

どんな形で残すのかは、ここまでの条文とは別のところに書かれています。 紙を読み取ってデータのほうで残す場合と、はじめからメールやサイトでやりとりした場合とで、 見る条文が分かれます。どちらも電子帳簿保存法という別の法律の話になるので、 この記事では入口だけ示しておきます。

  1. 紙で受け取った・紙で作った契約書を、紙で残す

    この記事で見た年数・数え始め・置く場所がそのまま当てはまる

  2. その紙を読み取って、データのほうで残す

    電子帳簿保存法のほうに、別の要件が置かれている

  3. はじめからメールやサイトでやりとりした

    これも電子帳簿保存法のほうの話になる

同じ契約書でも、どう受け取り、どんな形で残すかで、見る条文が分かれる

メールやサイトでやりとりした契約書については契約書を電子で保存するときの決まりごとに、紙を読み取ってデータで残す場合については紙の契約書をスキャンして残すとき、解像度や色に決まりはあるのかに、それぞれ条文を引いて書いています。

一人だからこそ、決めておくと楽になること

ここからは条文ではなく、引いた条文から考えるとこうなる、という話です。

条文が求めているのは、要するに「整理し」て「保存」することです。 個人でも法人でも、どの条文にも「整理し」が入っています。 山になっていても捨てていなければよい、とは書かれていません。

そして、数え始めが年または事業年度の区切りで決まることを考えると、 置き方も年や事業年度で分けておくほうが、あとで探しやすくなります。 2026年に受け取った契約書は2027年3月16日から五年または七年。 この計算は、年でまとめてあれば一度で済みます。

一人で仕事をしていると、「どこに置いたか」を覚えているのは自分だけです。 覚えているうちは困りませんが、起算日から数えて五年、七年、十年という長さは、 記憶が頼りにならなくなる長さです。紙の契約書をやめるときも、 送り方を変えるのと一緒に、受け取ったあとの置き場所を決めておくと、あとが楽になります。

どこまでが確かで、どこからは確かでないか

この記事で条文から確かめられたのは、次のことです。

  • 契約書は、保存すべき書類として条文に名前で挙がっている (所得税法施行規則 第63条第1項第3号、法人税法施行規則 第59条第1項第3号)。 自分が作った書類の控えも対象に含まれている
  • 青色申告者は原則七年間で、第3号の書類のうち現金預金取引等関係書類に該当しないものは五年間 (所得税法施行規則 第63条第1項・第3項)。青色申告法人は七年間 (法人税法施行規則 第59条第1項)
  • 数え始めは、個人が翌年3月15日の翌日、法人が事業年度終了の日の翌日から二月を経過した日 (同 第63条第4項、第59条第2項)
  • 置く場所も条文に書かれている。個人は住所地・居所地または事務所など、法人は納税地 (または第3号の書類については取引に係る国内の事務所など)
  • 欠損金の繰越しの適用を受けようとする場合、その事業年度の帳簿書類は十年間 (法人税法施行規則 第26条の3第1項)

一方で、お手元の契約書が五年なのか七年なのか、青色申告でない場合に契約書が第102条第3項第2号の「その他これらに類する書類」に 入るのかは、この記事では決められません。条文はそこまで書いていないからです。 事業の形も、契約書が作られた場面も、人によって違います。個別の当てはめは、所轄の税務署か税理士にご確認ください。この記事は、公表されている条文を一般的にまとめたもので、個別の判断に代わるものではありません。

引用した条文は、いずれも2026年10月12日時点で効力のある版です (所得税法施行規則・法人税法施行規則とも2026年10月1日施行の版)。 税の決まりは毎年のように手が入るので、大事な判断のときは、その時点の条文をご確認ください。

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