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電子帳簿保存法

紙の契約書をスキャンして残すとき、解像度や色に決まりはあるのか

2026年10月12日·約9分·株式会社ケアン

契約書が紙で届くことは、まだあります。相手が紙で送ってくる。こちらから紙で出した控えが戻ってくる。 それをスキャンしてPDFにし、紙のほうは処分してしまいたい、と考える方は多いと思います。

これはできます。ただし条件が付いていて、その条件の中には解像度や色の細かさまで数字で書かれているものがあります。 「とりあえずスマホで撮っておいた」で足りるのかどうか。条文を順に見ていきます。

スキャンしたデータを、紙の代わりにできる制度があります

根拠は電子帳簿保存法の第4条第3項です。少し長いのですが、前半だけ引きます。

保存義務者は、国税関係書類(財務省令で定めるものを除く。以下この項において同じ。)の全部又は一部について、当該国税関係書類に記載されている事項を財務省令で定める装置により電磁的記録に記録する場合には、財務省令で定めるところにより、当該国税関係書類に係る電磁的記録の保存をもって当該国税関係書類の保存に代えることができる。

— 電子帳簿保存法 第4条第3項。出典: e-Gov 法令検索の 法令データ(読む用の 条文ページ)

「代えることができる」。ここが、前に書いた電子でやりとりした契約書の保存との大きな違いです。あちらは「保存しなければならない」という義務でしたが、こちらは選べる制度です。紙のまま棚に置いておく道は、そのまま残っています。

国税庁も、この制度をこう説明しています。

保存義務者は、国税関係書類(財務省令で定めるものを除きます。)の全部又は一部について、その国税関係書類に記載されている事項を財務省令で定める装置により、電磁的記録に記録する場合には、一定の要件の下で、その電磁的記録の保存をもって国税関係書類の保存に代えることができることとされています

— 国税庁 電子帳簿保存法の概要「3 スキャナ保存制度の概要」より

紙のまま保存する

もとからの決まり

  • 紙を、決められた場所と期間しまっておく
  • この記事の要件は関係しない
  • 棚と書類が増えていく

スキャンして、データで代える

電子帳簿保存法 第4条第3項

  • 「代えることができる」。選べる制度
  • そのかわり、規則の要件に従って保存する
  • 解像度・色・出力・検索などが決められている
紙で受け取った契約書には、二つの道がある

「財務省令で定める装置」は、スキャナです

条文が「財務省令で定める装置」と書いている部分の答えは、施行規則の第2条第5項にあります。 ひとことです。

法第四条第三項に規定する財務省令で定める装置は、スキャナとする。

— 電子帳簿保存法施行規則 第2条第5項。出典: e-Gov 法令検索の 法令データ(読む用の 条文ページ)

もう一つ、第4条第3項の括弧の中にあった「財務省令で定めるものを除く」も、 中身が決められています。国税庁の説明では、こうです。

国税関係書類のうち、財務省令で除かれるものとしては、棚卸表、貸借対照表及び損益計算書並びに計算、整理又は決算に関して作成されたその他の書類が定められています

— 国税庁 電子帳簿保存法の概要「3 スキャナ保存制度の概要」より

除かれているのは、決算まわりで自分が作る書類です。契約書はこの一覧に挙がっていません。

まず、いつ読み取るか

要件の並びは施行規則の第2条第6項にあります。第1号は、読み取って入力する時期の話から始まります。二つの道が並べられていて、 いずれかを選ぶ形です。一つめはこうです。

当該国税関係書類に係る記録事項の入力をその作成又は受領後、速やかに行うこと。

— 同 第2条第6項第1号イ。出典: e-Gov 法令検索の 法令データ

二つめは、社内の決めごとを作ってある場合の道です。

当該国税関係書類に係る記録事項の入力をその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに行うこと(当該国税関係書類の作成又は受領から当該入力までの各事務の処理に関する規程を定めている場合に限る。)。

— 同 第2条第6項第1号ロ。出典: e-Gov 法令検索の 法令データ

括弧の中が効いています。月末にまとめてスキャンする、という運び方を選ぶなら、 受け取ってから入力までの事務の処理について規程を定めていることが前提になる、と読めます。 規程が無いなら、一つめの「速やかに」のほうだけが残ります。

解像度は、数字で書かれています

第2号は、その入力に使うしくみの話です。柱書きから引きます。

前号の入力に当たっては、次に掲げる要件(当該保存義務者が同号イ又はロに掲げる方法により当該国税関係書類に係る記録事項を入力したことを確認することができる場合にあっては、ロに掲げる要件を除く。)を満たす電子計算機処理システムを使用すること。

— 同 第2条第6項第2号。出典: e-Gov 法令検索の 法令データ

その中のイが、スキャナそのものの性能です。「次に掲げる要件を満たすものに限る」として、 二つが挙げられています。一つめが解像度です。

解像度が、日本産業規格(産業標準化法(昭和二十四年法律第百八十五号)第二十条第一項(日本産業規格)に規定する日本産業規格をいう。以下同じ。)Z六〇一六附属書AのA・一・二に規定する一般文書のスキャニング時の解像度である二十五・四ミリメートル当たり二百ドット以上で読み取るものであること。

— 同 第2条第6項第2号イ(1)。出典: e-Gov 法令検索の 法令データ

回りくどく書かれていますが、数字だけ取り出すと「二十五・四ミリメートル当たり二百ドット以上」です。 25.4ミリメートルは1インチにあたるので、機器の設定画面でいう200dpi 以上が、この条文の求めている線になります。 事務所の複合機でスキャンするときの初期設定は、これより高いことも低いこともあります。設定を一度は開いて見ておくほうが確かです。

二つめは、色の細かさです。

赤色、緑色及び青色の階調がそれぞれ二百五十六階調以上で読み取るものであること。

— 同 第2条第6項第2号イ(2)。出典: e-Gov 法令検索の 法令データ

赤・緑・青がそれぞれ256階調以上。機器の設定でいえば、 白黒やグレーではなくカラーで読み取ることになります。 契約書は黒い文字ばかりなので、容量を惜しんで白黒を選びたくなるところですが、 条文はこの数字です。朱肉の印や青いインクの署名の色も、白黒に落とさずに残すことになります。

色について、例外の定めもあります

同じ第2条の第7項に、書類の種類によって読み替える定めが置かれています。 まず、その対象です。

当該国税関係書類のうち国税庁長官が定める書類(以下この項及び第九項において「一般書類」という。)に記載されている事項を電磁的記録に記録する場合には

— 同 第2条第7項。出典: e-Gov 法令検索の 法令データ

この「一般書類」に当たる場合の読み替えが、同じ項の後ろに並んでいます。

同項第二号イ(2)中「赤色、緑色及び青色の階調がそれぞれ」とあるのは「白色から黒色までの階調が」と

— 同 第2条第7項。出典: e-Gov 法令検索の 法令データ

色ではなく、白から黒までの階調に読み替わります。つまり、 一般書類にあたるものについては、カラーでなくてよい形になっています。 ただし、何が一般書類なのかは「国税庁長官が定める書類」で、 条文の中には書かれていません。お手元の書類がそこに当たるのかどうかは、 所轄の税務署か税理士にご確認ください。この記事では決められません。

出す側の備えも、同じ項に並んでいます

読み取るだけでは終わりません。第4号は、求められたときに出せるようにしておくことです。

当該国税関係書類に係る電磁的記録の保存をする場所に当該電磁的記録の電子計算機処理の用に供することができる電子計算機、プログラム、映像面の最大径が三十五センチメートル以上のカラーディスプレイ及びカラープリンタ並びにこれらの操作説明書を備え付け、当該電磁的記録をカラーディスプレイの画面及び書面に、次のような状態で速やかに出力することができるようにしておくこと。

— 同 第2条第6項第4号。出典: e-Gov 法令検索の 法令データ

映像面の最大径が三十五センチメートル以上。画面の対角の長さが35センチ以上、 インチでいえば13.8インチ以上にあたります。ノートパソコンの画面の大きさが条文に出てくるのは、 意外に思われるかもしれません。カラープリンタも並んでいます。

そして「次のような状態で」の先に、四つが挙げられています。最初の二つは、こうです。

整然とした形式であること。

— 同 第2条第6項第4号イ。出典: e-Gov 法令検索の 法令データ

当該国税関係書類と同程度に明瞭であること。

— 同 第2条第6項第4号ロ。出典: e-Gov 法令検索の 法令データ

四つめは、もっと具体的です。

国税庁長官が定めるところにより日本産業規格Z八三〇五に規定する四ポイントの大きさの文字を認識することができること。

— 同 第2条第6項第4号ニ。出典: e-Gov 法令検索の 法令データ

4ポイントの文字。とても小さな字です。しかもこの号は「国税庁長官が定めるところにより」 と前置きされていて、確かめ方まで決められています。 ここが、実務でいちばん引っかかるところだと思います。ページの角が折れたまま読み取った、 斜めに入った、ホチキスの陰が文字にかかった——条文は「向き」という言葉を使っていませんが、整然とした形式で、もとの紙と同程度に明瞭で、4ポイントの文字が認識できると書かれている以上、横倒しや斜めのまま残したものをどう見るかは、 この三つに照らして考えることになります。読み取ったら開いて確かめる、という手間は残ります。

ファイル名の決まりは、条文にはありません

「ファイル名はこう付けなさい」と書いた条文は、探しても見つかりません。 書かれているのは、検索できるようにしておくことです。第5号です。

取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先(ロ及びハにおいて「記録項目」という。)を検索の条件として設定することができること。

— 同 第2条第6項第5号イ。出典: e-Gov 法令検索の 法令データ

続けて、ロとハがあります。

日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること。

— 同 第2条第6項第5号ロ。出典: e-Gov 法令検索の 法令データ

二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること。

— 同 第2条第6項第5号ハ。出典: e-Gov 法令検索の 法令データ

日付・金額・取引先の三つ。そして、範囲での指定と、組み合わせ。電子でやりとりした契約書のほうでも同じ三つが出てきました。紙をスキャンした場合も、電子で受け取った場合も、 探し方の要件は同じ形で置かれています。

ただし、この第6項の柱書きには、ロとハが外れる場合が書かれています。

当該保存義務者が国税に関する法律の規定による当該電磁的記録の提示又は提出の要求に応じることができるようにしている場合には、第五号(ロ及びハに係る部分に限る。)に掲げる要件を除く

— 同 第2条第6項。出典: e-Gov 法令検索の 法令データ

外れるのはロとハだけで、イは残ります。つまり 日付・金額・取引先で探せることは、どちらにしても求められている、と読めます。

条文がファイル名に触れていない以上、やり方は一つではありません。書類を管理するしくみの側に検索の機能があるなら、ファイル名は通し番号でも成り立ちます。 フォルダにPDFを並べるだけで済ませるなら、名前の付け方でそこを満たすことになります。 後者を選ぶなら、三つを決まった順で並べておくと、あとから並べ替えも絞り込みもできます。

  1. 20260928_1200000_〇〇商事.pdf

    日付を先頭に置くと、名前の順に並べただけで時系列になる

  2. 20261005_0480000_△△工業.pdf

    金額の桁を揃えておくと、目でも追いやすい

  3. 20261012_2750000_〇〇商事.pdf

    取引先の書き方を社内で統一しておくと、名前での絞り込みが効く

フォルダにPDFを並べる場合に、日付・金額・取引先を名前で持たせる例(条文はファイル名を定めていない)

紙を捨てるかどうかは、別の判断です

ここまでの要件を満たしてデータで保存すれば、紙のほうを持ち続けなくてよい、 という形の制度です。ただ、条文が言っているのは税法の上での保存に代えられるということだけです。 契約書の紙そのものを持っておく意味は、税法の外にもあります。 原本をどうするかは、要件を満たしたかどうかとは別に考えることになります。

どこまでが確かで、どこからは確かでないか

この記事で条文から確かめられたのは、次のことです。

  • 紙で受け取った契約書は、スキャナで読み取ったデータの保存をもって、その書類の保存に代えることができる(電子帳簿保存法 第4条第3項)。義務ではなく、選べる制度
  • 解像度は 25.4ミリメートル当たり200ドット以上、色は赤・緑・青がそれぞれ256階調以上 (規則 第2条第6項第2号イ)
  • 読み取りは「速やかに」行う。通常の期間を経過した後にまとめて行う道は、 事務の処理に関する規程を定めている場合に限られる(同 第6項第1号)
  • 最大径35センチメートル以上のカラーディスプレイとカラープリンタを備え、整然とした形式で、 もとの書類と同程度に明瞭に、4ポイントの文字が認識できる状態で出せるようにしておく (同 第6項第4号)
  • 日付・金額・取引先を検索の条件として設定できるようにしておく(同 第6項第5号イ)
  • 「一般書類」については、色の要件が白から黒までの階調に読み替えられる(同 第7項)

一方で、お手元の契約書が「一般書類」に当たるのか、どの道を選ぶのが自社に合うのか、 紙を処分してよいのかは、この記事では決められません。書類の種類と事業の形で変わります。 国税庁は一問一答(Q&A)を電子帳簿保存法関係のページで公開していますが、個別の当てはめは、所轄の税務署か税理士にご確認ください。 この記事は、公表されている条文と国税庁の説明を一般的にまとめたもので、 個別の判断に代わるものではありません。

引用した条文は、いずれも2026年9月28日時点で効力のある版です。この法律と規則は 毎年のように手が入るので、大事な判断のときは、その時点の条文をご確認ください。

最後に、いちばん確かなことを書いておきます。はじめから紙にしなければ、この記事の要件は出てきません。解像度も、階調も、4ポイントの文字も、紙を読み取るからこそ出てくる条件です。契約書を紙で往復させるのをやめると、 守るべき決まりのほうも、ひとつ少なくなります。

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