取引先への案内
取引先に「電子契約でお願いします」と伝える文例
2026年9月10日(更新 2026年9月11日)·約7分·株式会社ケアン
電子契約は、自分の会社だけでは始まりません。送る側の準備がどれだけ整っていても、 受け取る相手が「はい」と言ってくださって、はじめて1件目が終わります。
ですから、切り替えを進めるときに手が止まりやすいのは、操作のところではなく、取引先にどう切り出すかのところです。言い方ひとつで、 「わかりました」で終わることもあれば、「本社に確認します」のまま止まることもあります。
そこで、そのまま使える文例を3つ(メール・電話・書面)と、 聞かれそうなことへの答え方をまとめました。〇〇の部分を差し替えれば使えます。
相手が知りたいのは、3つだけ
案内文を書く前に、これを決めておくと迷いません。受け取った相手が知りたいのは、 次の3つがほとんどです。
- 私は、何をすればいいのか(画面で何回押すのか、時間はどれくらいか)
- お金と手間はかかるのか(登録は要るのか、誰が払うのか)
- 断ったら、どうなるのか(取引に響くのか、これまでどおりでいいのか)
逆に、相手が知りたくないことは「こちらがなぜ切り替えたいか」です。 紙を減らしたい、事務を効率化したい、というのはこちらの都合で、 相手の得にはなりません。案内文の中心に置くと、頼みごとが押しつけに見えます。
通りにくい文面に、共通していること
- 主語がこちらの都合になっている。「弊社では業務効率化の一環として」から 始まる文は、相手の作業が最後まで出てきません
- 相手の作業が想像できない。「電子契約に切り替えます」だけでは、 相手は自分が何をするのか分かりません。分からない依頼は保留になります
- 断り方が書いていない。断る道が示されていない依頼は、 相手にとって「押し切られる話」に見えます。かえって身構えられます
- 期限だけが書いてある。「〇月〇日までにご対応ください」は、 理由が添えられていないと、こちらの事情の押しつけとして読まれます
文例1: メールで伝える
いちばん使う場面です。次の契約からお願いしたい、というときの文面です。
件名: 契約書のお取り交わし方法について(株式会社〇〇)
〇〇株式会社
〇〇部 〇〇様
いつもお世話になっております。株式会社〇〇の〇〇です。
このたび、契約書のお取り交わしを、郵送から電子でのやりとりに切り替えさせていただきたく、 ご連絡いたしました。
貴社にご対応いただく内容は、次のとおりです。
・弊社より、契約書のご確認をお願いするメールをお送りします
・メール内のリンクを開いていただくと、契約書がそのまま画面に表示されます
・内容をご確認のうえ、画面上のボタンを押していただければ完了です
貴社側でのアカウントのご登録、専用アプリの導入、印鑑のご用意は必要ありません。 費用もかかりません。パソコンでもスマートフォンでもご確認いただけます。
契約書の書式と内容は、これまでと同じものです。変わるのは受け渡しの方法だけです。
なお、紙でのお取り交わしをご希望の場合は、その旨お知らせください。 これまでどおり郵送いたします。
ご不明な点がございましたら、本メールにご返信ください。何卒よろしくお願いいたします。
直すとしたら、次の3か所です。
- 相手の作業の3行は削らない。ここが「私は何をすればいいのか」への答えです。 短くしたくなりますが、ここが抜けると、相手は自分の手間を見積もれません
- 「紙をご希望なら郵送します」の1行も削らない。断る道が書いてあるほうが、相手は落ち着いて読めます。 全部の取引先が同じ日に切り替わる必要はありません
- 期限を入れるなら、理由と一緒に。「〇月〇日の納車に間に合わせるため」のように、 相手にとっての意味がある期限だけを書きます
文例2: 電話で伝える
電話で先に一言入れておくと、メールが埋もれません。ただし、電話でその場の返事をもらおうとしないことです。 電話の役目は「このあとメールが届きます」という予告で、決めていただくのは画面を見てからで構いません。
「〇〇様、いつもお世話になっております。〇〇の〇〇です。
このあと契約書をお送りするのですが、今回からメールでお送りする形にさせていただいても よろしいでしょうか。
届いたメールのリンクを開いていただくと、契約書がそのまま出てきます。 ご確認いただいて、画面のボタンを押していただければ終わりです。 ご登録や、印鑑のご用意は要りません。
中身はこれまでと同じ書式です。紙のほうがよろしければ、これまでどおり郵送いたしますので、 遠慮なくおっしゃってください。」
説明は3文まで、と決めておくと迷いません。電話で長く説明するほど、 「何か面倒なことを頼まれている」と受け取られやすくなります。 最後は必ず、相手が断れる形で終えます。
文例3: 書面で知らせる
取引先が多く、一軒ずつ電話できないときの形です。請求書に同封する、 年度の切り替えに合わせて送る、といった使い方をします。
契約書のお取り交わし方法変更のご案内
拝啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
さて弊社では、〇年〇月より、契約書のお取り交わしを電子でのやりとりに順次切り替えて まいります。つきましては、下記のとおりご案内申し上げます。
敬具
記
一、開始時期 〇年〇月〇日以降にお取り交わしする契約書より
一、ご対応いただくこと 弊社よりお送りするメールのリンクを開き、内容をご確認のうえ、 画面上のボタンを押していただきます
一、ご用意いただくもの ありません(アカウントのご登録・専用アプリ・印鑑・費用は、 いずれも不要です)
一、契約書の内容 従来と同じ書式・同じ内容です
一、紙をご希望の場合 従来どおり郵送いたしますので、下記までお申し付けください
以上
書面は「読まれない前提」で作ります。記書きに用件だけを並べ、経緯や意気込みは書きません。 そして、一斉の案内ほど「ご希望があれば紙で」の1行が要ります。通知の形だけで届くと、選ばせてもらえなかった、と受け取られやすいからです。
聞かれそうなことと、答え方
「社内の規定で押印が必要なんです」
まず、押印が求められているのが社外に出す契約書なのか、社内の決裁なのかを伺います。ここが分かれ目で、 後者であれば社内の回し方の話になり、外に出す形とは別に整理できることがあります。 規定そのものを変えてくださいという話にはしません。相手の社内の話に踏み込むと、 窓口の方が困ります。
「上長(本社)に確認します」
待つしかない場面ですが、待ち方はあります。相手が上に上げるときに要るのは、何が変わるかを一言で言える材料です。 だから案内メールは、そのまま転送しても意味が通る文面にしておきます。 担当者しか分からない前置きや、社内の略語を入れないということです。
「セキュリティは大丈夫ですか」
ここで技術や法律の説明を始めると、かえって不安にさせます。 聞かれているのは、たいていの場合、技術の話ではなく 「メールを見た人なら誰でも押せてしまうのではないか」という心配だと思います。 ですので、誰が押したかを確かめる手順を1文で答えるのが早いです。 Csign では、メールのリンクに加えて、携帯電話にSMSで6桁の確認コードをお送りし、 画面に入力していただく形を選べます。詳しい説明は法令への対応にまとめてありますので、 そちらをご案内すれば足ります。
「紙の控えが欲しい」
締結した契約書はPDFでダウンロードできますので、まずそれをご案内します。 そのうえで、印刷した紙に署名や押印をしてお渡しする場合は、収入印紙の扱いが変わることがあります。署名・押印のない印刷物であれば、国税庁は「単なる写し」として課税対象にならないとしています。 ここは順番を間違えると後から効いてくるところなので、電子契約に収入印紙が要らないのは、なぜかに、国税庁の見解を引いて書きました。紙をお渡しする前に、一度ご覧ください。
「そちらのシステムに登録が必要ですか」
必要ありません。これはいちばん誤解されやすいところなので、 案内文の早い位置に書いておきます。後ろのほうに書くと、 そこまで読まれずに「登録が要るなら面倒だ」で止まります。
「うちの様式で契約したい」
そのままで構いません。電子でやりとりするからといって、書式を作り直す必要はありません。 相手の様式の契約書でも、PDFにできれば送れます。 私たちも、以前から使っている注文書の書式をそのまま使っています (1本目の記事に書きました)。
断られたときは、どうするか
押さないことです。理由は3つあります。
- 全社一斉に切り替える必要がない。1社が紙のままでも、 ほかの契約は電子で進みます。切り替えは、できるところから順に進めれば足ります
- 相手が別の方法を指定してくることがある。相手側が使っている仕組みで送りますと言われたら、そちらに合わせます。 こちらの都合で始めた話なので、こちらが譲るのが筋です
- 時間が解決することがある。相手の社内の事情は変わります。 担当者が代わることも、規定が見直されることもあります。 しばらく経ってから、もう一度伺って構いません
断られた1件を追いかけるより、まだ聞いていない取引先に案内するほうに時間を使う。 そのほうが、全体としては早く進みます。
送る前に、確かめておきたい3つ
- 宛先が、その契約を締結できる方に届くか。代表のアドレスに送ると、担当の方まで回らないことがあります
- SMSでの確認を使うなら、日本の携帯電話番号か。海外にお住まいの方には確認コードをお送りできないため、送る前に確かめます
- その契約が、法令で書面によることを求められていないか。契約の種類によっては、書面で作ることや公正証書にすることが定められているものがあります
最後に
ここに書いた文例は、あくまで型です。取引先との関係も、これまでのやりとりの経緯も、 会社ごとに違います。そのまま使うより、相手の作業を3行で書くことと、断る道を1行残すことの2つだけ守って、あとはいつもの文体に直していただくのが、 いちばん通りやすいと思います。
なお、どの契約が書面によることを求められているか、電子でのやりとりに切り替えてよいかは、 契約の種類と中身によって変わります。判断に迷うものは、弁護士などの専門家にご確認ください。 この記事は一般的な情報をまとめたもので、個別の判断に代わるものではありません。