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電子署名

会社の電子証明書が「リモート署名」になりました(商業登記リモート署名)

2026年11月2日·約9分·株式会社ケアン

契約書を電子でやりとりするとき、「会社として署名する」やり方は、大きく2つに分かれます。

  • 電子契約のサービスの側が立ち会う形で、その事業者の鍵を使って署名する方法
  • 会社が自分の鍵を持っていて、その鍵で署名する方法

2つめで使われる「会社名義の鍵」として、国が出しているものがあります。 登記所(法務局)が出す商業登記電子証明書です。 条文の並びでいうと、会社の印鑑証明の決まり(商業登記法第12条)のすぐ次に置かれています。

その商業登記電子証明書の使い方が、2026年(令和8年)7月21日に変わりました。新しい方式は「商業登記リモート署名」と呼ばれています。 いま会社で電子証明書を使っているところには、期限のある話も含まれているので、 法務省のページに書いてあることを、そのまま並べていきます。

7月21日から、新しい方式が動いています

まず、いつから始まったのか。法務省の「よくあるご質問」に、はっきり書かれています。

令和8(2026)年7月21日(火)午前9時から運用を開始いたしました。

— 法務省「商業登記リモート署名 よくあるご質問」A1-1。出典: 法務省のページ

何が変わったのかを一言でいえば、鍵の置き場所です。 これまでは、証明書と鍵をファイルとして受け取り、自分のパソコンの中に置いていました。 新しい方式では、その置き場所が変わります。法務省は、利点としてこう書いています。

署名鍵がクラウド環境上で安全に管理されることで、利用者のPC環境に限定されず電子署名を付与することができるようになります。

— 法務省「商業登記リモート署名 よくあるご質問」A1-3。出典: 法務省のページ

鍵が自分のパソコンの中に無い代わりに、署名するときに 「署名してよい」と認める操作が入ります(後で引くA2-18に、その認可が 鍵パスワードの入力と認可端末による認可コードの入力で行われることが書かれています)。

そもそも、商業登記電子証明書とは何を証明しているのか

ここは法律に根っこがあります。商業登記法の第12条の2です。 条文の見出しは「電磁的記録の作成者を示す措置の確認に必要な事項等の証明」。 長い名前ですが、第1項の第1号を読むと、何を証明するものなのかが分かります。

電磁的記録に記録することができる情報が被証明者の作成に係るものであることを示すために講ずる措置であつて、当該情報が他の情報に改変されているかどうかを確認することができる等被証明者の作成に係るものであることを確実に示すことができるものとしてデジタル庁令・法務省令で定めるものについて、当該被証明者が当該措置を講じたものであることを確認するために必要な事項

— 商業登記法 第12条の2第1項第1号。出典: e-Gov 法令検索の 法令データ(読む用の 条文ページ)

読みにくい一文ですが、骨は2つです。その電子データを作ったのが誰かを示せること。あとから中身が書き換えられていないかを確かめられること。この2つを満たす「措置」について、それを講じたのが確かにこの人だと確認するために必要な事項を、 登記所が証明する――という組み立てになっています。

同じ形の決まりは、電子署名法の第2条第1項にも置かれています。そちらは5本目の記事で条文のまま引いているので、合わせて読むと見通しが良くなると思います。

そして、その証明を出すのは誰かも、条文に書かれています。

第一項及び第三項の規定による証明は、法務大臣の指定する登記所の登記官がする。

— 商業登記法 第12条の2第5項。出典: e-Gov 法令検索の 法令データ

登記官が証明する、というところがこの証明書の性格です。 会社がそこに登記されていること、代表者が誰かということと、地続きになっています。

立会人型との違いは「誰の署名鍵で署名するか」

電子契約のサービスには、事業者が立ち会う形で署名するものがあります (事業者署名型、立会人型と呼ばれます)。それとの違いについて、 法務省は1文で説明しています。

事業者署名型のサービスでは、事業者の署名鍵で電子署名を行いますが、商業登記リモート署名では、利用者の署名鍵で電子署名を行います。

— 法務省「商業登記リモート署名 よくあるご質問」A1-4。出典: 法務省のページ

書かれているのは、誰の鍵で署名するかという作りの違いまでです。 どちらが優れている、という評価は書かれていません。この記事でもしません。 当社のサービスがどちらに当たるかについても、ここでは触れません。 条文と役所の説明から言えるところまでが、一般的な情報として書ける範囲です。

いま持っている証明書は、どうなるのか

ここが、すでに使っている会社にとっていちばん大事なところです。 結論から言うと、手元のファイル形式の証明書は、期限まではそのまま使えます。ただし、新しいリモート署名では使えません。

ご利用中の商業登記電子証明書(既存のファイル形式の電子証明書)は、商業登記リモート署名の導入後(令和8(2026)年7月21日(火)以降)も、その有効期限までご利用いただけます。ただし、リモート署名方式での利用はできず、従来のローカル環境での署名時のみの利用となります。

— 法務省「商業登記リモート署名 よくあるご質問」A2-1。出典: 法務省のページ

では、リモート署名を使いたいときはどうするのか。取り直しです。

既存のファイル形式の商業登記電子証明書は商業登記リモート署名では利用できません。商業登記リモート署名で電子署名を行う場合は、その運用開始(令和8(2026)年7月21日(火))以降に、商業登記電子認証ポータルを用いて新規で商業登記電子証明書を取得いただく必要があります。

— 法務省「商業登記リモート署名 よくあるご質問」A2-2。出典: 法務省のページ

同じ回答の続きには、新しい証明書を取っても、 手元のファイル形式の証明書が無効になるわけではない、とも書かれています。 2つを持っている状態になる、ということです。

これまでの方式(ファイル形式)

有効期限までは使える

  • 証明書と鍵をファイルで受け取り、パソコンの中に置く
  • 署名はそのパソコンの中で行う
  • リモート署名方式では使えない

商業登記リモート署名

令和8年7月21日から

  • 署名鍵はクラウド環境上で管理され、使うパソコンを選ばない
  • 署名のたびに「署名してよい」と認める操作が入る
  • 使うには、証明書を新しく取り直す
法務省のよくあるご質問(A1-4・A2-1・A2-2)に書かれていることを並べ直したもの

使い始めるまでに、何が要るのか

申請の入口も変わりました。これまでパソコンに入れて使っていた 「商業登記電子認証ソフト」ではなく、ブラウザで開くウェブサイトになります。

従来の商業登記電子認証ソフトに代わり、ブラウザ上で提供されるウェブサイトである商業登記電子認証ポータル(令和8(2026)年7月21日(火)から提供開始)にログインの上、申請準備を行っていただくことになります。ログインにはGビズIDアカウントが必要となりますので、事前の取得をご検討ください(アカウント種別によりご利用可能な機能が異なりますので、ご注意ください。)。また、GビズIDアプリをインストールしたスマートフォンや、インターネット環境も必要となります。

— 法務省「商業登記リモート署名 よくあるご質問」A2-7。出典: 法務省のページ

  1. GビズIDのアカウントを用意する

    アカウントの種別によって使える機能が違う、と注意書きがある

  2. GビズIDアプリをスマートフォンに入れる

    アプリを入れたスマートフォンとインターネット環境が要る、と書かれている

  3. 商業登記電子認証ポータルにログインして、申請の準備をする

    ブラウザで開くウェブサイト。パソコンに入れるソフトではない

  4. 登記所(法務局)へ発行を申請して、証明書を取得する

法務省のよくあるご質問(A2-7)に書かれている、用意するものと順番

費用のことも書かれています。発行手数料の額そのものは変わりません。

発行手数料については、現行の商業登記電子証明書と同額です。

— 法務省「商業登記リモート署名 よくあるご質問」A2-10。出典: 法務省のページ

証明期間ごとの金額は、法務省の 「商業登記リモート署名の利用方法」のページにある「電子証明書の証明期間と発行手数料」の表に載っています。 ここで数字を書き写すと古くなるので、金額はそちらでご確認ください。

ひとつ、期限が決まっています

これまで使われてきた「商業登記電子認証ソフト」には、終わりの日が出ています。

「商業登記電子認証ソフト」は、商業登記リモート署名の導入(令和8年7月21日(火))後も一定期間提供及びサポートを継続しますが、サポートについては令和9年3月31日(水)に終了することを予定しています。

— 法務省「商業登記リモート署名 よくあるご質問」A2-3。出典: 法務省のページ

令和9年3月31日、つまり2027年3月31日です。 「予定しています」という書き方なので、そのまま予定として読むのが正しいと思います。 同じ回答の続きには、サポートが終わったあともソフトの提供は一定期間続ける予定だが、 再発行などの新規発行以外の用途に限ってもらうことになり、動作保証はできず、 予告なく提供を終える場合もある、と書かれています。

会社の電子証明書で何かの手続をしている場合は、いま持っている証明書の有効期限と、この日付を並べて見ておくと、慌てずに済みそうです。

知っておくと、戸惑わないところ

契約書のような書類に署名する使い方で、先に知っておいたほうがよいことが2つあります。

1つは、1回の認可で署名できる本数に上限があることです。

法務省が提供する商業登記リモート署名ドライバソフトでは、電子署名が商業登記電子証明書の被証明者(会社の代表者等)の意思の下で行われることを担保するため、1回の署名認可で付与することができる電子署名の回数は10回までとしています(1回の署名認可で、10ファイルまで電子署名を付与することができます。)。

— 法務省「商業登記リモート署名 よくあるご質問」A2-18。出典: 法務省のページ

10本を超えるときは、もう一度、認可のやり直しが要るという説明です。 理由も書かれていて、会社の代表者の意思の下で署名が行われることを担保するためとあります。手間というより、歯止めとして置かれているもののようです。

もう1つは、手元のパソコンでいつもどおり署名したいときの話です。 そのための部品が別に用意されています。

従来どおりのローカル環境での電子署名を可能とするオプション機能です。商業登記リモート署名ドライバソフトをインストールすることで、例えばAdobe Acrobat Reader等を用いてローカル環境で電子署名を付与することが可能となります(Windowsのみ対応予定)。

— 法務省「商業登記リモート署名 よくあるご質問」A1-6。出典: 法務省のページ

PDFに署名を付ける使い方をしている会社は、ここを見落とすと 「ポータルで証明書は取ったのに、いつもの署名ができない」ということになりそうです。 なお、このドライバソフトは Windows のみ対応予定と書かれています。

どこまでが確かで、どこからは確かでないか

この記事で、法務省のページと条文から確かめられたのは次のことです。

  • 商業登記リモート署名は、令和8年7月21日午前9時から運用が始まっている
  • 事業者署名型は事業者の署名鍵、商業登記リモート署名は利用者の署名鍵で署名する (法務省A1-4)
  • 既存のファイル形式の証明書は有効期限まで使えるが、リモート署名方式では使えず、 使うには新しく取得する必要がある(同A2-1・A2-2)
  • 「商業登記電子認証ソフト」のサポートは、令和9年3月31日に終了する予定(同A2-3)
  • 商業登記電子証明書の証明は、法務大臣の指定する登記所の登記官がする(商業登記法第12条の2第5項)

一方で、この記事では決められないことがあります。

  • 自社の契約のやりとりに、どちらの方式が向いているか
  • いま使っている手続や相手方のシステムが、新しい方式に対応しているか
  • ある契約書にこの証明書で署名したとき、争いになったときにどう評価されるか

最初の2つは、使っている手続や相手方の事情で変わります。移行の手順や設定で分からないことは、 法務省のページに案内のある「商業登記リモート署名サポートデスク」や、 登記の手続をお願いしている司法書士にご確認ください。 3つめのような契約上の評価については、弁護士などの専門家にご相談ください。 この記事は公表されている条文と役所の説明を一般的にまとめたもので、 個別の判断に代わるものではありません。

それでも、ひとつはっきりしていることがあります。会社の電子証明書は、自分のパソコンの中から、少しずつ外へ出ていきます。鍵をどこに置くか、という話は、印鑑を金庫のどこに置くかという話と、 たぶん同じ種類の悩みです。置き場所が変わるときに期限がひとつ決まっている、 というところだけ、先に知っておければ十分だと思います。

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